富有柿と早生富有柿の違いは?

秋の果物の代表格の一つである

柿

柿の中でも特に有名な柿に「富有柿」があります。

ただ、富有柿の中には「早生富有柿」というものがあり、「どのような違いがあるの？」と気になっている人も多いようです。

なので今回は富有柿と早生富有柿の違いについて紹介していきます。

富有柿と早生富有柿について

◆富有柿

富有柿という品種名は1898年、中国の基本的な古典「礼記」にある言葉、「富有四海之内」（天下を豊かに保つ、安泰という意味）から付けられました。

明治時代から現在に至るまで、広く日本人に愛されてきた品種です。1品種の柿から良い実をつける個体を選び、接ぎ木を重ねて改良を続けた結果、誕生しました。

1892年の柿品評会では1等を獲得するまでにおいしく優秀な柿へと成長し、各地に生産地が広まりました。

同年1898年には岐阜県農会が主催する品評会においてまたも1等を獲得し、1904年には天皇家への献上品となるなど、これまでに多くの名誉を受けた格式高き品種でもあります。

◆早生富有柿

早生富有柿は、正式な品種名を「松本早生富有」と言い、1935年に発見された、富有柿の枝変わり（少し違う性質を持つ種が生まれる突然変異のこと）の品種です。

品種名に「松本」が含まれるのは、京都在住の松本氏という人物が発見したことによるそうです。

富有柿と早生富有柿の違いを徹底比較

◆親品種

富有柿の親品種は、岐阜県原産の伝統的な品種「御所柿（ごしょがき）」と呼ばれる柿です。

「御所柿」の中から味、風味、形などが良いものを選び、接ぎ木を重ねることで、「御所柿」を改良して生まれたのが、この品種です。

早生富有柿の親品種は、「富有」です。

突然変異により、富有柿と比較して、ほんの少しだけ収穫時期の異なる新品種が生まれました。

◆見た目

両者は言わば親子、兄弟の間柄ですから、外見を比較して見ても、切った断面を見ても、ほとんど違いは見られません。

まったく違いが無い、と言っても良いでしょう。

いずれも球形を少しつぶしたような丸形で、ふっくらと太り、実ごとの形が揃っていて、目見栄えの良い品種です。

店頭に並んでいる実が果たしてどちらなのかを判別するには、お店に出回る時期や店頭の表示を注視するか、店員さんに直接聞くしか手立てがありません。

強いて違いを挙げるとすれば、富有より早く出回る早生富有は、あまり実が大きくなるまで収穫を待つと、早生（わせ＝早く実ること）であるゆえの希少価値がなくなり、ほとんど同じものになってしまいます。

そのため、農家が早く収穫する傾向にあり、若干小さめのものが店頭に並ぶことが多い、という点でしょうか。

◆旬の時期

富有柿はの出荷は10月中旬ごろから始まり、11月中旬から下旬にかけてピークを迎え、12月下旬ごろに終わります。

翌年1月から2月頃まで売られているのを見たことがある、という方もいらっしゃるかも知れませんが、それは収穫したものを一定期間冷蔵庫で保管し、意図的に時期をずらしたものです。

青果はやはり採りたて、できれば産地直送のものを味わっていただきたいもの。

よって11月あたりが、自信を持っておすすめできる旬の時期と言えます。

対して、早生富有の出荷時期のピークは10月下旬から11月上旬と、富有柿と比較すると2～3週間ほど早くなっていますので、旬もその分だけ早く訪れます。

柿が好き、特に富有が大好きという方にとっては、旬の期間が長いのはありがたいことではないでしょうか。

◆味

味についても、見た目同様、富有柿と早生富有に大きな違いはありません。

両方とも、強い甘みと柿特有の風味をお楽しみいただけます。

富有柿はその熟し度合いによって食感に大きな差が出るという特徴があります。

硬めのさくさくとした柿が好きという方は、店頭で軽く触れてみて硬い実を選び、お早めにお召し上がりください。

逆に、とろんとした食感の柿が好みという方は、やわらかめの実を、もしお店に硬い実しかない場合は、ご自宅で熟すまで待ってからお召し上がりいただくことをおすすめします。

すべての柿において共通することですが、店頭で選ぶ際は「へた」の状態を見て、果実とへたがぴったりくっついて、なるべく隙間のないものを選びましょう。

色は、お尻の部分が茶色く変色しておらず、全体が均一に鮮やかなオレンジ色をしているもがお勧めです。外皮がピンと張っていて、手に取った時にずっしりと重量感があるのも、良い実の証拠です。

触感でも判別できますが、オレンジ色が濃ければ濃いほど完熟に近いサインですから、硬い、やわらかいの好みに合わせて、薄い色、濃い色の実を選んでください。

◆値段

富有柿は小さめの130グラム程度のもので70円前後、大きめの200グラム超のものでは150円前後となっています。

早生富有柿は希少性が若干高いため、その分高い値がつきますが、決して手の届かないレベルではありません。

まとめ

完熟前のサクッとした食感と、完熟した実のトロッとした食感、そして強い甘みと豊かな風味が魅力の富有柿と、その突然変異種で若干収穫時期の早い早生富有柿。

それぞれ外見、味ともに差はほとんどありません。

国内の柿の品種別栽培面積シェアでトップを誇り、柿の代表と言っても過言ではない「富有」を、より長く、そして深く堪能してください。